「NHKのど自慢」はどんな気持ちで観ればいいのか。

　　　　　　　　　

全国のジジババの心を捉えて離さない国民的番組、「NHKのど自慢」。毎回、会場となる地域の老若男女が自慢の美声を響かせている。受信料の結晶、公共放送の到達点ともいうべきこの番組。

だがしかし冷静に考えてほしい。あの番組で歌う人たちは全員もれなく素人だ。プロでもなんでもない。なぜそんな人たちの歌を日曜日のお昼時にウキウキウォッチングせねばならんのだ。

突然画面上に飛び出してくる地元の女子高生。おもむろに西野カナを歌い始める。やめろ、やめてくれ。素人感が出過ぎているし、女子高生が西野カナを歌うなんてベタすぎて気が狂いそうだ。どうしようもなく恥ずかしい。お茶の間で観ているこちらの事も考えてくれ。どんな顔をして同居人たちと昼食のうどんをすすればいい？

きっと彼女は生まれてこのかた地元の島育ち。夏は泥だらけになりながら昆虫を捕まえ、冬はまっさらな雪の大地に大の字に飛び込むような、おてんばな少女時代を送ったに違いない。おおらかにすくすくと育ったのだろう。だから自意識に押しつぶされる事なく大勢のお客さんの前でトリセツを歌える。

「ずっと大切にしてね　永久保証の私だから」なんて常人のメンタリティでは歌唱できない。この女子高生および西野カナ本人以外が歌おうとしようものなら、永久保証どころか永久追放である。逢いたくて震えるどころの話ではない。

次にステージ中央に出てきたのは、若い女性１人と若い男性２人の３人組。この組み合わせは絢香コブクロの「WINDING ROAD」と相場は決まっている。そうなんだろ？歌うんだろ？ほら！やっぱり曲がりくねったやんけ！！！

とにかくハモリを見せつけてくる。必要以上にハモってくる。そのまま骨切りされて湯引きされてしまえ。だいたいこの３人の関係性はなんなんだ。達也と和也と南か？？？幼馴染で共用の勉強部屋があるパターンか？？？先に和也と南がくっつきかけて３人の間に微妙な空気が流れたけど大人になった今やいろんなことは思い出にしてみんなそれぞれの人生を歩んでるってかあああ？？！！

おいおい！そんなこと言ってたら合格したぞ！和也の高音が評価されたらしい！南とチョメチョメしただけのことはあるな！！！

さらにさらに間髪入れず出てきたのはおばあちゃん。天城越えだ！！！

声張り上げすぎて天城越えする前に三途の河を越えてしまいそうなおばあちゃん。のど自慢出場のきっかけはババ友とカラオケに行った時にけしかけられたから。すっかりその気になってしまってその夜家族に思い切って相談してみたら結構な勢いで反対されて一時期フードストライキしたりしたけど、今や家族も会場にうちわを持って応援しに来てくれている！！！まさに家族愛！！！

ステージやや後方で出番を待っている参加者さんたちも微笑みながらおばあちゃんの歌声に体を揺らしている。なんだこの会場の一体感は。どういう教育受けてきたらそんなに共感力の高い人間になれるんだ！！いい人しか出てないよ！この番組いい人しか出てないから！！

とかなんとか言ってたらサビがくる！

くるぞくるぞくるぞ！！！せーーーーの！あーーまぎーーーごおおおおおええええええ！！！！！！合格だ！！おばあちゃん合格！！！たとえ合格でなくとも僕の心の中では合格だから！！！

なんなんだこの世界中の良心をじっくりことこと煮込んだような番組は。良心の濃縮還元１００％番組だ、良心の濃縮還元１００％番組だよ！

受信料の結晶とか言ったやつ誰だ出てこい！！！めっちゃいい番組だからみんな見なさい！！！うわああああああ！！！！！！！